応用文章題解法テクニック集 - 効果的な数学的思考法
作成日: 2025年4月3日
作成者: Terminal7 inc
バージョン: 1.0
はじめに - 文章題の基本アプローチ

前回の基本問題では「わさに注目」、つまり「同じところはどこかに注目」することの重要性を学びました。文章題を解く際、問題の構造を理解し、共通要素や法則性を見つけることが重要です。

今回は、その考え方をさらに発展させ、より複雑な応用問題に取り組む方法を紹介します。基本的な考え方は同じですが、問題の難易度が上がると、新たな思考法が必要になります。

文章題の基本アプローチ:

  1. 問題文に何が書かれているかを正確に把握する
  2. 共通要素や変化する部分を見つける
  3. 適切な解法や考え方を選択する
  4. 解決策を論理的に組み立てる
テクニック1: 奇数・偶数の性質を活用
数値が不明でも奇数・偶数の性質で解決する方法

具体的な数値がわからない場合でも、奇数・偶数の性質に着目することで問題を解決できることがあります。数値は無限にありますが、奇数・偶数という観点では2種類に分類できます。

奇数・偶数の基本性質:

  • 奇数 + 奇数 = 偶数
  • 奇数 + 偶数 = 奇数
  • 偶数 + 偶数 = 偶数

考え方の例

4つの数 A, B, C, D があり、それぞれを2つずつ組み合わせた和が 25, 30, 33, 34, 37, 42 だった場合:

  1. 各和が奇数か偶数かを確認する
  2. A + B = 25(奇数)、A + C = 30(偶数)などと分類
  3. 奇数の和と偶数の和のパターンから各数の奇偶性を推定
  4. 特定の組み合わせの値を導き出す
A + B = 25 (奇数) A + C = 30 (偶数) B + C = 33 (奇数) A + D = 34 (偶数)
結論: A + D = 34(偶数)となることが論理的に導き出せる
テクニック2: 支払い問題の図式化
支払いの流れを視覚化する方法

金銭の支払いに関する問題では、誰が何を支払い、誰から誰にお金が移動したかを図式化することで解決の糸口が見えてきます。

図式化の手順

  1. 関係者全員を図に配置する
  2. 最初の支払い状況を記録する
  3. お金の移動を矢印で表現する
  4. 最終的な状態を計算する

ポイント: 支払いの前後で全体の合計額は変わらないことを活用しましょう。

ヨシ君 ソブエ君 バルボ君 450億円 60億円

例題: 火星旅行の交通費問題

ヨシ君、ソブエ君、バルボ君の3人が火星旅行に行き、それぞれが異なる交通手段の費用を3人分支払いました。後日精算の際、ソブエ君はヨシ君に450億円、バルボ君に60億円支払いました。このとき、スペースシャトルの費用(ヨシ君が支払った)はジェット機の費用(ソブエ君が支払った)の3倍でした。

解法のポイント: 支払い前後での公平な分担を考え、差額から各交通手段の費用を算出します。

異なる対象への分配問題を解く

物を人に配る問題や、人を物に配置する問題では、分配の関係性を明確にすることが重要です。特に分配の対象が異なる場合の考え方を紹介します。

のみとダニの配分問題

引き出しに入っている「のみ」と「ダニ」をおじさんたちに配る問題:

  • のみの数はダニの数の3倍
  • おじさんたちにのみは9匹、ダニは5匹配った
  • のみは24匹残った

この問題の難しさは、配るものの数がバラバラという点です。

のみの引き出し × 3 ダニの引き出し × 1 おじさんたち 9匹ずつ 5匹ずつ

解決アプローチ:

  1. 比率を活用する(のみ:ダニ = 3:1)
  2. 配分量の差に注目する(9匹と5匹の差)
  3. 残りの量と人数の関係を見出す

結論: おじさんは4人で、のみは合計60匹いたことがわかる

椅子に人を座らせる問題

長椅子に人を座らせる問題では、「物に人を配置する」という視点が必要です。この場合、主人公は椅子(物)であり、それに人をどう配置するかを考えます。

問題例:

  • 1脚に4人ずつ座らせると10人が座れない
  • 1脚に5人ずつ座らせると椅子が7脚余る

この問題では、椅子の数と人数の関係を方程式で表現し、解く必要があります。

1脚の長椅子に4人または5人ずつ座る 椅子の数と人数の関係を見出す必要がある
椅子の数 × 4人 = 全員の人数 - 10人(座れない人)
(椅子の数 - 7脚) × 5人 = 全員の人数
※ 椅子と人数の関係を言葉で表現
テクニック4: ミキサー法
異なる要素を組み合わせて新しい単位を作る

複数の異なる要素(価格や数量など)を含む問題では、それらを組み合わせて新しい単位を作る「ミキサー法」が有効です。これにより、問題を単純化できることがあります。

ミキサー法の手順

  1. 組み合わせたい要素を特定する
  2. それらを適切な比率で「ミキサー」に入れる
  3. 新しい単位を作り出す
  4. 単純化された問題として解く
100円の傘 80円の傘 90円の傘

例題: 100円、80円、60円の傘を合計30本買って2340円支払った。100円の傘と80円の傘は同じ本数買った。

ミキサー法の適用:

  1. 100円と80円の傘を1本ずつミキサーに入れる
  2. 平均単価90円の新しい「カラフルな傘」という単位を作る
  3. 問題を「90円の傘と60円の傘を買った」問題に単純化
  4. 単純化された方程式で解く

結論: 100円の傘と80円の傘はそれぞれ9本ずつで、60円の傘は12本

まとめ - 応用文章題を解くための思考法

応用文章題を解くためには、基本的な「わさに注目」の考え方をベースにしながら、問題の特性に合わせて様々なテクニックを適用することが重要です。

この資料で学んだ主なテクニック

  • 奇数・偶数の性質を活用 - 具体的な数値がわからなくても、奇偶性で判断
  • 支払い問題の図式化 - お金の流れを視覚化して関係性を明確に
  • 分配問題の考え方 - 物と人の関係性を正確に把握する
  • ミキサー法 - 複数の要素を組み合わせて問題を単純化

実践のためのアドバイス

  • 問題文を丁寧に読み、条件を正確に理解する
  • 図やメモを活用して視覚化する習慣をつける
  • 様々なアプローチを試してみる柔軟性を持つ
  • 解けない問題に出会っても諦めず、徐々に経験を積む
  • 基本的な考え方をしっかり身につけ、応用問題に挑戦する

重要なポイント:

文章題は「まるまるさん」という名前の解法として暗記するのではなく、なぜそうなるのかを考える力を養うことが大切です。問題の本質を理解し、適切なアプローチを選択できるようになりましょう。