受験ドクター読解:国語力向上ガイド:指示語の理解と活用

論理的文章読解のための基礎技術

作成日:2025年4月3日

バージョン:1.0

1. 指示語とは

指示語の定義

指示語(シジゴ)とは、文章中で特定の事物・場所・方向などを指し示す言葉です。日本語では「コソアド言葉」とも呼ばれ、会話や文章の中で重要な役割を担っています。

論説文や説明文といった説明的文章においては、指示語の内容理解が文章全体の把握に直結します。指示語が何を指しているのかを正確に理解できなければ、文章全体の意味を正確に捉えることができません。

指示語の種類と例 基本形 こ:話し手に近いもの そ:聞き手に近いもの あ:両者から遠いもの ど:疑問・不定 派生形の例 モノ: これ・それ・あれ・どれ 場所: ここ・そこ・あそこ・どこ 方向: こちら・そちら・あちら・どちら 様子: こんな・そんな・あんな・どんな 状態: こう・そう・ああ・どう ※「コ・ソ・ア・ド」を語頭に持つ言葉が指示語となります

2. 指示語の重要性

指示語の存在理由

指示語は、同じ表現を繰り返さないようにするために存在します。指示語がない世界では、すべての対象を毎回具体的に指定しなければならず、コミュニケーションが非常に不便になります。

例: 指示語を使った会話
「まるみ、ほら、こないだあそこで食べたチョコレートパフェ。普通のパフェと違ってフレークの代わりにスポンジ入ってたじゃない?」
「うん。あのパフェね。」
「そうだね。そうそう。あのフレークの代わりのスポンジ美味しいよね。」

指示語がない場合

指示語を使わない場合、同じ内容を伝えるためには、対象を毎回具体的に説明しなければなりません。これにより文章が冗長になり、読みにくくなります。

例: 指示語を使わない会話
「まるみ、ほら、3日前の3月3日に横浜のレブロンで食べたチョコレートパフェ。普通のパフェと違ってフレークの代わりにスポンジ入ってたじゃない?」
「うん。レブロンのパフェね。」
「レブロンのパフェが他のところのパフェと違ってるってことね。ほら、フレークの代わりのスポンジ美味しいよね。」

指示語の問題点

指示語は便利な反面、何を指しているかが明確でない場合には、コミュニケーション上の問題を引き起こします。特に文章においては、指示語が指す対象が明確でないと読み手が混乱する原因となります。

例: 不明確な指示語の使用
「たけし、ほらあれ取って。」
あれって何だよ。」
「ほらあれってあれよ。最近言葉が出てこない。ほらお茶…」
「キュースからな。」
このように指示対象が明確でない場合、コミュニケーションが成立しません。国語の問題では、指示語が何を指しているかを明確に理解することが重要です。

3. 指示語の基本ルール

ルール 内容 重要ポイント
ルール1 文章や記述回答に指示語は使わない 「このこと」という表現は避け、具体的に書く
ルール2 指示語の内容記述は、指示している内容だけでなく文末の形に気をつけてまとめる 「ここ」→「場所」、「あちら」→「方」など
ルール3 指示語の内容を記述したら、元の文の指示部分に回答を代入して確かめ算をする 意味が通じれば正解
ルール4 説明文の傍線部に指示語が含まれていたら、必ず指示内容を確定してから問題を解く 国語の解き方の基本手順
ルール5 「このように」など広範囲を指示する指示語の場合、範囲を確定させてから情報を引いたりまとめたりする 広範囲の内容を正確に把握する
指示語の確かめ算のポイント

指示語が何を指しているかを確認する「確かめ算」は、国語の問題を解く上で貴重な検証手段です。

例: 確かめ算の方法

元の文: 「遠くにお寺が見える。女は太郎に『あちらに行ったら戻って来られなくなるよ』と言った。」

指示語の内容: 「あちら」→「遠くにお寺が見える方」

確かめ算: 「遠くにお寺が見える。女は太郎に『遠くにお寺が見える方に行ったら戻って来られなくなるよ』と言った。」

→ 意味が通じるので正解

4. 指示語問題の解法と実践

実践手順

1

指示語を見つける

2

前後の文脈から指示対象を特定

3

文末の形に注意して内容をまとめる

4

確かめ算で検証

実践例1: 基本的な指示語問題

問題例

「イギリス人にとって家の持つ個性や歴史は自分の内面とリンクするとても重要な要素なのだ。このポイントを無視して物件を決めるなどありえない。」

下線部の「この」は何を指しているか答えなさい。

正解: 「家の持つ個性や歴史」

確かめ算: 「イギリス人にとって家の持つ個性や歴史は自分の内面とリンクするとても重要な要素なのだ。家の持つ個性や歴史を無視して物件を決めるなどありえない。」

実践例2: 複雑な指示語問題

問題例

「イギリスでは家は持った時から始まり、家を持つことは継続して関わり続けること、オンゴーイングプロジェクトと言われている。これは、家を持ったら最後全てがそこで集結しなければならない日本人の考えとは対立する。」

下線部の「これ」は何を指しているか30文字前後で答えなさい。

正解: 「家を持つことは継続して関わり続けることというイギリスの考え」

指示語が指す対象が複合的な場合、その全体を含めて答える必要があります。

指示語問題の難しさと対策

指示語問題は一見簡単に見えても、正確に答えるには文脈の理解と論理的思考が必要です。以下のポイントに注意しましょう:

  • 文脈の正確な理解: 前後の文脈を含めて文章全体の論理展開を把握する
  • 内容の適切なまとめ方: 指示語が指す内容を過不足なく記述する
  • 文末の形に注意: 「場所」「方向」「もの」など、指示語の種類に応じた文末を使用する
  • 確かめ算の習慣化: 回答を元の文に代入して意味が通じるか確認する

指示語は文章理解の基礎となる重要な要素です。文章が難しく感じられる原因の一つに、指示語が何を指しているか分からないという問題があります。指示語の使い方と理解を練習することで、読解力全体が向上します。

5. 論説文における指示語の重要性

論説文では、筆者が自分の主張を展開する過程で指示語を効果的に使用します。指示語の理解は文章全体の論理構造を把握するために不可欠です。

論説文における指示語の役割 前方照応の指示語 先に出てきた内容を指す (最も一般的なパターン) 例: 「AはBである。 このことから...」 後方照応の指示語 これから説明する内容を指す (少数派だが重要) 例: 「私はこう考える。 すなわち...」 ※指示語が示す方向を理解することが文章理解の鍵となります

論説文では、指示語が指し示す内容を正確に把握することで、筆者の論理展開や主張を理解することができます。特に「このように」「これらの理由から」といった広範囲を指す指示語は、前段までの内容全体を指していることが多く、文章の要点をつかむ手がかりとなります。

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