日本のパン文化の葛藤と進化

「日本のパンは僕には日本そのものに見えます。ミニチュアな日本のようでもあります。」
2025年3月24日
グラフィックレコーディング

日本のパンの立ち位置

根無し草のパン文化

「そもそもパンは日本にはなかったものです。日本の文化は何千年とパンを必要としなかった」

✏️ 本来の日本:航を漕いで着物を着て、下駄を履いて米を食べるのが日本人にとって性に合っていた

✏️ 歴史の荒波:西洋のいろいろなものを受け入れざるを得なかった

パンの位置づけ

🍞 根無し草感が出てしまう

🍞 日本文化には根っこがない

🍞 文字通り「根無し」

🍞 フワフワして流行に流される

ヨーロッパとの違い

✏️ ヨーロッパでは何千年とほとんど変わらぬものを着て、変わらぬものを食べている

「ポンペイ遺跡にも行ってみました。パン屋があり、窯も、今とそんなに変わっていません。」

なぜ日本人はフワフワするのか

🍞 100年そこらでヨーロッパを追っているから

🍞 しかたがないが、葛藤は抱えつつ進んでいくのが宿命

🍞 「いつの日か、日本の文化となることを夢見つつ」

ファッションとしてのパン

「日本におけるパンはまだ流行に左右されるファッション段階なのです」

🍞 ドイツパンブーム(ブームにはならなかった)

🍞 天然酵母ブーム

🍞 バケットブーム

🍞 ハード系

🍞 食パンブーム

🍞 塩パンブーム

「パン業界の新聞を見ても『次は○○が流行る!』という見出しばかり。業界、お客さん、メディア、みんなでパンをファッション化しています」

なぜファッションになるのか

✏️ 日本でのパンは主食ではない

✏️ 主食=それがないと、その国の食が成り立たないもの

ヨーロッパの主食としてのパン

日常に溶け込むパン

「フランスのパン屋さんは、自分のお店が休みで家にパンがないときは、しぶしぶほかの店のパンを買っていました」

✏️ ヨーロッパの食堂では何も言わなくても無料でパンがカゴに盛られて出てくる

食事の進め方

✏️ 一つのお皿で食事を進めていく

✏️ サラダを食べたあとはパンでお皿を拭いてきれいにして次へ

✏️ サラダを食べるとき:

パンの役割

1. サラダをナイフとフォークで切る

2. ナイフは置いて、左手にパン、右手にフォーク

3. 逃げるサラダをパンで支えて、フォークでエイッとざっくり刺す

✏️ 「手を直に使うのははしたないけれど、パンでの間接技なら有効」

「パンはナイフやフォークと同じぐらい食事において必要なもので、ないと食事にならないのがパンです」

変わらない主食文化

✏️ ヨーロッパでは季節で売れ行きが全く違う、今年はあのパンが流行って来年は別のパンが流行るということはあまりない

日本のパン屋の葛藤と展望

🍙 和食との比較

「蕎麦屋や寿司屋だったら、お客さんも職人も『良い蕎麦とは』『良い寿司とは』という、ある種の共通文化があります」

✏️ 「今年はてんぷら蕎麦がブームだ」「いま軍艦巻きがキテる!」なんて、雑誌に載ったりしない

🍞 パン屋の課題

「どんなパンが『良いパン』なのか、ということは計れません。つくっている本人だってわかりません」

✏️ パン業界は共通の価値観がない状態

日本人のエネルギーと進化

「『苦しいです、勝ちたいです、もの真似でもいいから、とにかく千年の歴史なんて飛び越えてみせます』という、すごいエネルギーを持っているのもまた、日本人だと思っています」

✏️ ヨーロッパ中に修業に行く日本人職人たち

✏️ 「なんで日本にこれが必要なんだ?」という葛藤を抱えながら

✏️ 「なんでわざわざパンを習いに来たの?」と不思議がられる

「大陸の極東。最果ての地の定めなのか、昔からいろんな国のものが流れつき、それを食欲に飲み込み、技術を突き詰め消化してきたご先祖さま」

筆者の決意

🍞 「ヨーロッパに負けないものをつくってやろうじゃないか」

🍞 「主食の座にはどっしりとご飯がひかえている。それがいい。日本のためにはそうでないといけない」

🍞 「パンなんてちょろっと片手間でいい。でも中途半端ではいけない」

🍞 「いつかはそれもすっかり消化して、本当の日本の文化にしてやるのだ」