クローズドガードからの攻撃バリエーション

戦略と技術への完全ガイド

2025年4月

はじめに:クローズドガードの定義と重要性

クローズドガードはBJJにおいて最も基本的かつ重要なガードポジションの一つです。下の実践者が相手の胴体に両脚を回し、足首を組んでロックする体勢を指します。

クローズドガードの基本形 両脚で相手の胴体を包み込み、足首を組む 上の人 下の人 足首を組んでロック

戦略的価値

コントロールの維持 - 相手の動きを制限し、安全なポジションを確保

スイープのセットアップ - 相手をひっくり返して上になること

サブミッションのセットアップ - 関節技や絞め技への展開

クローズドガードは初心者が最初に学ぶガードとして認識されていますが、その重要性は初心者レベルに留まらず、白帯から黒帯に至るまで有効なポジションであり続けます。

⚠️ 重要:単にガードを閉じているだけでは不十分です。IBJJFのルールでは、積極的に攻撃を仕掛けないと膠着(Stalling)とみなされ、ペナルティを受けるリスクがあります。

クローズドガードの基本原則

A. メカニズムとコアコンセプト

クローズドガードの核心は、相手の腰と体幹を直接コントロールすることにあります。これにより:

  • ✅ 相手の動きを大幅に制限
  • ✅ パスガードのための力や機動力を削ぐ
  • ✅ 特別な柔軟性を必要としない
  • ✅ 防御面で強力

B. 主要目的:コントロール、崩し、攻撃の起点

BJJの基本概念 ベース 安定性 ポスチャー 姿勢 ストラクチャー 骨格による支え これらを崩す!

クローズドガードからの攻撃の第一歩は「相手の姿勢(ポスチャー)を崩す」ことです。道衣の襟や袖、頭部へのグリップを活用し、相手を前方または下方へ引きつけます。

次に重要なのが「角度(アングル)を作ること」です。腰をずらし、中心線から外れ、通常は45度程度の角度を作ることで、相手の腕や首を攻撃しやすくします。

C. 「密着」とヒップエンゲージメントの重要性

密着:自身の体(特に脚)と相手の腰や胴体との間の隙間を最小限に保つこと

ヒップエンゲージメント:常に腰をマットから少し浮かせ、かかとで相手を引きつけるようにする

これらの要素「姿勢の崩し」「密着」「ヒップエンゲージメント」「角度作り」は相互に深く関連しています。

高確率サブミッション

A. 腕十字固め(Juji Gatame)

腕十字固め(Juji Gatame) 肘関節を狙うクローズドガードからの基本技 ターゲット: 相手の肘 ポイント: ・姿勢崩し→相手の腕をコントロール ・脚を頭上に回し、腰を持ち上げる

セットアップ:

姿勢の崩しと登り
相手のプッシュを利用
連携攻撃から
対スタンディング

B. 三角絞め(Sankaku Jime)

三角絞めは、両脚と相手の片腕を使って首を絞める強力な技です。多様なセットアップが存在します。

セットアップのポイント:

  • 👉 姿勢コントロール(相手の姿勢を崩し、頭部と片腕をコントロール)
  • 👉 オーバーフック利用(片腕を固定し、襟グリップと組み合わせる)
  • 👉 適切な角度(45度程度)を作り、相手の腕が首を横切るように

C. キムラロック

キムラロック 相手の腕をフィギュアフォーグリップで固め、肩関節を攻撃 フィギュアフォーグリップ 捻り上げる方向 ✓ 自分の手首を掴む ✓ 体を横向きに回転させる

セットアップのタイミング:

相手が手をマットについた時

ヒップバンプスイープを相手が防御した場合

グリップブレイクから

D. オモプラッタ

オモプラッタは、脚を使って相手の肩関節を極める技で、三角絞めと似たセットアップから移行することが多いです。

キーポイント:良好な股関節の動きが要求され、相手の姿勢コントロールが極めて重要です。サブミッションが失敗しても、スイープやバックテイクに繋がる可能性が高い技です。

E. 主要な絞め技

ギロチンチョーク
十字絞め
ボウアンドアロー
裾絞め
アームトライアングル

サブミッション選択の原則:

単一の技を強引に狙うのではなく、相手の姿勢や防御反応によって生まれる機会を的確に捉えること。

  • ・相手が手をついた → キムラ
  • ・高い姿勢 → 腕十字や三角絞め
  • ・絞め技を防御 → 腕十字
  • ・腕十字を防御 → 三角絞めやオモプラッタ

効果的なスイープテクニック

クローズドガードからのスイープは、不利な下ポジションから有利な上ポジションへと移行するための重要な手段です。

A. 基本的なスイープ

基本的なスイープテクニック シザースイープ ハサミのように脚を動かす 襟と袖のグリップ ヒップバンプ 腰を高く突き上げる 片腕コントロール ペンデュラム 脚を振り子のように 片腕/姿勢コントロール 立ち上がった相手へのスイープ ダブルアンクル シングルアンクル その他のオプション ・ウェイタースイープ ・エレベータースイープ ・特定グリップを利用したスイープ

B. 立ち上がった相手へのスイープ

  • 🔄 ダブルアンクルスイープ
  • 🔄 シングルアンクル/トライポッドスイープ
  • 🔄 シャンジスイープ

C. その他のスイープオプション

  • 🔄 ウェイタースイープ
  • 🔄 エレベータースイープ
  • 🔄 オモプラッタスイープ

効果的なスイープの原則:

相手の姿勢や動きに大きく依存します。

  • ・ヒップバンプ → 相手が姿勢を上げた時
  • ・シザー/ペンデュラム → 姿勢が崩れた時
  • ・フラワー → 相手が足を踏み出した時
  • ・アンクルスイープ → 相手が立ち上がった時

クローズドガードからの戦略的移行

A. ガードを開く理由とタイミング

クローズドガードは強力ですが、状況によってはガードを開き、他のポジションへ移行することが戦略的に有効な場合があります。

相手の立ち上がり/ガードブレイク
攻撃の停滞
異なる角度/攻撃の模索
対大型/強力の相手
能動的な選択

B. オープンガードへの移行経路

クローズドガード スパイダーガード DLRガード バタフライガード ハーフガード テクニカル スタンドアップ 袖グリップ フック 足裏フック 脚のコントロール 立ち上がり

基本原則:ガードを開くと、双方の機動力が増します。パスを防ぐために、素早く新しいフレーム(支え)やグリップを確立することが不可欠です。

主な移行先ガード:

  • スパイダーガード - 袖のグリップと足裏で距離をコントロール
  • DLRガード - 片脚を相手の脚の外側からフック、立ち上がった相手に有効
  • バタフライガード - 足裏を相手の内腿に当て、スイープに適している
  • ハーフガード - 相手の片脚をコントロール、多様なバリエーション
  • ラッソーガード - 中間的ステップとして活用

C. テクニカルスタンドアップの活用

スペースを作り、距離を取る、あるいは立ち上がるための基本的な動作です。攻撃的に用いれば、スイープやテイクダウンのセットアップにもなります。

相手への適応

クローズドガードの効果を最大限に引き出すには、相手の姿勢、防御、攻撃に対して柔軟に適応する能力が求められます。

A. 高い姿勢 vs 低い姿勢への戦略

高い姿勢 vs 低い姿勢への対応 低い姿勢 有効な攻撃: ・キムラロック ・ギロチンチョーク ・ペンデュラムスイープ ・フラワースイープ ・オーバーフック活用 高い姿勢 有効な攻撃: ・ヒップバンプスイープ ・腕十字固め ・三角絞め ・シザースイープ ・シャンジスイープ

B. スタンディングガードブレイクとパスへの対策

相手が立ち上がると、重力がパスの武器となり、機動力が増します。相手にとってはスイープのリスクが増える一方、サブミッションのリスクは減少する傾向にあります。

具体的なカウンター:

  • 👊 スイープ:ダブルアンクル、トライポッド、シックルなど
  • 👊 サブミッション:ハイガードからの腕十字
  • 👊 トランジション:素早くDLR、スパイダーなどへ移行
  • 👊 テクニカルスタンドアップ:最終手段として

C. グリップと防御フレームの管理

グリップ争い:常にグリップの攻防が発生します。相手が姿勢コントロールやパスのために使うグリップを解除し、自分が攻撃を仕掛けるための有利なグリップを確立します。

フレームの使用:姿勢を崩されたり、ガードが開かれたりした場合、腕(前腕)や脚(脛、膝)を使ってスペースを作り、相手が胸を合わせてプレッシャーをかけてくるのを防ぎます。

クローズドガードにおける成功は、固定された手順ではなく、相手の微細な変化(姿勢の変動、グリップの試み、体重配分)を常に読み取り、適切な対応を瞬時に行う能力にかかっています。

アタックチェーンとコンビネーションの構築

A. BJJにおける連携攻撃(チェーンアタック)の理念

高レベルになるほど、単発の攻撃は防御されやすくなります。攻撃を連携させる(チェインする)ことで、相手に防御反応を強要し、次の技への隙を作り出すことができます。

B. 具体的なコンビネーション例

アタックチェーンの例 ヒップバンプからの連携 ヒップバンプ 手をつく キムラ 押し返す ギロチン 姿勢を上げる 三角絞め サブミッションチェーン 腕十字 腕を引き抜く 三角絞め 姿勢を上げる オモプラッタ 防御 スイープ サブミッション → スイープ キムラロック グリップ利用 スイープ 上になる 別の攻撃

C. 自身のアタックフローを開発するための原則

コアテクニックの習得

高確率な連携の特定

トランジションの反復練習

シンプルな連携から開始

自分の体/スタイルへの適応

高度なクローズドガードの本質は、単に多くの技を知っていることではなく、予測可能な相手の反応に基づいて技がどのように相互接続するかを理解することにあります。

推奨される学習リソース

Shrapnel BJJ
DEEP HALF CLUB
新・柔術日記チャンネル
BJJ Fanatics
Grapplearts
Jiu-Jitsu Brotherhood

結論:クローズドガードの永続的な力と複雑性

クローズドガードは、その原則が理解され、動的に応用されるならば、コントロールと攻撃のための強力なプラットフォームとして、BJJの礎であり続けるポジションです。

クローズドガードの真髄は、個々の技を知ることだけにあるのではありません。むしろ、それらの技がどのように相互に連携し、相手の反応にどう適応し、流れるようなアタックチェーンを構築できるかという点にあります。熟練とは、静的なポジションの保持ではなく、動的な相互作用の中で生まれるのです。